心理作戦といこうか。
彼のマンションから最寄り駅まで徒歩で五分程度のこの距離を一緒に来てくれた玲くんにバイバイしようとしたが、彼は役所に用があるとかで本日は一緒に出勤となった。

乗り慣れてない路線は嫌だなと思っていたら意外にも今まで利用していた路線なのと、駅も一駅しか違わなかった。
昨夜は一心不乱に玲くんの指示通りに動いていたから其どころじゃなくて気が付かなかった。

「玲くんと私ってご近所さんだったんだね!」

「ん?ああ、そうだな。」
口数の少ない玲くんを不思議に思ったけど、車内は通勤通学のピークの時間帯だったので玲くんの腕にギュッと掴まって目的の駅まで凌いだ。

とはいえ、役所に着いてしまえば、私は裏へと周り警備員さんに社員証を提示して中へ入るので直ぐのお別れとなるのだけど…。

「玲くん、ありがとう。
 お仕事に遅刻しないようにね!
 終わったら…正門の…モニュメントの所で待ってる。」

「うん。わかった。
 真琴?昨日の事、忘れてない?」

昨夜から何度目かわからないが、また腕を掴まれた。
"昨日の事"…たくさんありすぎて、どれだろう?

「ん?昨日のどれの事?
 たくさんあって、どの事か迷っちゃうよ。」

「真琴!昨夜の事を忘れたなんて言わせないからな。
 全く。
 確かに色々な事を一気に話した俺も悪かったから、もういいよ。
 じゃあ、18時に正門のモニュメントの所な!」

不思議な会話が終わり、"お仕事頑張ってね。"と玲くんに伝え別れた。
ちょっとほっとした。。。

「ふぅ。解放された。」

疲れがどっと出たので持ち場についたらお砂糖とミルクたっぷりのコーヒーでも飲むことに決めた。

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