心理作戦といこうか。
行き先まで案内しようと、フロアマップを引き出しから一枚手に取り窓口から出て、玲くんの方へ向かうと彼もこちらへ来てくれた。

「玲くんはどこに用があるの?
 これがフロアマップなんだけど…ん?」

「真琴。こっちへ。」

「うん?なあに?」
肩を抱かれるような体勢で窓口の方へと向かう。
窓口に着くと玲くんは軽く会釈をした。

「おはようございます。
 お忙しいところ、大変恐縮ですが皆様にお集まり頂けますか?」

「玲くん?」

その一言で"なにがあったんだ?"と不思議に思う人、"え?なになに~"と噂話大好きと言わんばかりに興味津々に思い人と次々と集まり出す。私の課の方たち。
私の戸惑いなんて気にもせずに、課の方が集まるのを見守っている。

「お忙しい始業時にお集まり頂き、ありがとうございます。
 手を止めさせて、すみません。
 いつも、水谷がお世話になってます。
 僕は彼女とお付き合いをしている野中 玲と申します。
 将来の事が決まりましたら、また日をあらためてご挨拶に参ります。
 至らないところがあるかと思いますが、どうか暖かい目で見守って下さると僕としては助かります。」

・・・・・。
目が点になった。
一瞬、ふわりといや、くらりとしたと思ったら玲くんの腕が腰に回った。
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