心理作戦といこうか。
可愛らしいクリーム色の外壁の所々がレンガ造りになっている建物が見えてきたと思えば、どうやら目的地らしくそちらへ車が進んで行く。
とてもじゃないけど入りづらいです!という雰囲気ではないその建物に安堵する。

恐らく、個人で経営している雰囲気。
真っ白の建物にイタリアの旗が一つ、建物に架かってヒラヒラと揺れている。
ドアまでに階段が二段あり、手すりもとてもお洒落だ。
駐車場の場所はお店の直ぐ目の前だ。
エンジンを切り、玲くんがこちらを見る。

「真琴。大丈夫だから行くぞ。
 荷物は俺が持つ。
 助手席のドアは俺が開けるから待ってて。」

「…分かった…。」

過保護過ぎる。
もう、玲くんはお父さん、いやお母さんみたいじゃんと心の中だけで突っ込みを入れておく。

助手席のドアが開かれ玲くんの右手が差し出された。
お手をどうぞ、お姫様。的な感じで。

「真琴?行くぞ。
 お腹ペコペコだろ?」

「うん。ありがとう。
 とっても可愛らしいレストランだね!」

「今日はイタリアンだ。
 真琴の好物が沢山詰まった店だな。」

「やったぁ~~
 私が注文決めるから、玲くんはそれを一緒に食べようね?
 あっ!」

しまった。と思い、両手で口を塞ぐ。
これも子どもの頃からの癖。
玲くんとちかちゃんは私に甘えさせてくれて、私が食べられるもの、食べたいものを注文してそれを皆で戴く。

「真琴が食べたいのを注文して良いよ。
 引っ越し祝いも兼ねてる。」

「ありがとう。」
昔からの変わらない優しさに感謝しなきゃ。
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