心理作戦といこうか。

「総合病院まで。」と運転手さんに山内さんが対応してくれて、保険証の存在に置き去りにしていたのでお財布を確認する。

「よかった。あった。」
めんどくさがりの私はお財布に保険証を使ったまま入れっぱなしだった。
ホッとしたので軽く目を瞑り病院までに気持ちを落ち着かせる。

＊

診察で脱水の傾向が見られたので点滴になった。
注射だけは避けたいと思っていたので、やんわり軽い症状を伝えたのにばれてしまった。

「水谷さん！お手洗い済ませて点滴室に来て。」
クールな看護師さんの指示を受け、ノロノロとお手洗いを済ませ言われたとおりに点滴室と掲げてあるお部屋へと足を運ぶと山内さんが心配そうに来てくれた。

「山内さん！
　今から点滴なんです。
　大体二時間ほどかかるみたいで。
　お礼を直ぐに出来ず心苦しいですが、お先にお家へ…」
「ちょっと！水谷さん！なにしてんのよ？
　お手洗いは済んだの？
　それならベッドに来て。
　あと、あなた付き添い？
　彼女の荷物持ってて。
　点滴室には入室禁止ですから。」

山内さんに本日のご挨拶をしているところを看護師さんに遮られた。
ほぼ強制的に連れて行かれた。
もちろん、点滴室にだ。

「山内さん、今日はありがとうございました。」
振り絞って出てきた言葉がこれ。
本当に言葉の引き出しの少なさに渇いた笑いが出た。
点滴中はどっと疲れが出たのかぐっすり眠ってしまった。