心理作戦といこうか。
近くのコインパーキングに車を停め、目的地へと向かう。
何年振りに足を踏み入れるだろう、この場所が懐かしくて思わず笑みを浮かべる。
子どもの頃は大きく見えた滑り台やジャングルジムがこんなに低かったっけ?と思う。

「玲くん、懐かしいね。
 それにしてもどうして此処へ?」

「真琴の事を好きになった場所だから。
 此処しかないなと思ったから。
 もっとお洒落な場所も考えたけど。」

「ん?」こっちへと言われて玲くんと玲くんのお友だちがよく鬼ごっこを混ぜてくれたジャングルジムの方へ進む。

(懐かしい。あのときは見上げると高くて怖かったのに。降りるときはもっと怖くて玲くんに降ろしてもらってたっけ。)

「真琴、上に登ろう。」
「え!」
「大丈夫だから。」
言われたとおりに上に登ると玲くんが差し出してくれた手を取る。
(やっぱり、少し怖かった。)
玲くんは落ちないようにと昔と同じように腰に腕を回して支えてくれる。

「うわあ~懐かしいなあ。」

「真琴?こっち見て。」

なに?と言いながら首を傾げ、玲くんを見る。

「真琴。結婚して下さい。
 こんな場所で言うのも何だけど…」

「え?けっこん?付き合うとかじゃなくて?」

「そう。結婚。
 もう、付き合ってるだろ?」

ああ。そうだった。
最近、色々あって少し忘れかけていた…。
"全く、しっかりしろよ"と言うようにおでことおでこを合わせてくる。

「此処で出会ってからずっと、真琴が好きだ。
 同棲を初める前から結婚したいと思っていた。
 真琴は?やだ?」

嫌な訳がない。
彼の告白が嬉し過ぎて迷うことなく飛び付いた。
「真琴!?」

「玲くん、ありがとう!!
 不束者ですが宜しくお願いします。
 それでね、玲くん。
 そろそろジャングルジムから降ろして。」

玲くんのプロポーズは嬉しいし高所恐怖症ではないけど、この細い鉄の棒たちの上に居るのはそろそろ限界だった。
こんな時でも色気のない私だけど、玲くん許してね。
< 96 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop