婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
あれは……ヴァネッサを囲んでいた取り巻きの令嬢達ね。ヴァネッサ本人はいないみたい。
ということは、やはり彼女がアルフレッドの婚約者なのかしら?


「どれぐらい先なのか……」


唐突に話し出した私に、アルフレッドが前のめりになる。一言も漏らさない勢いだ。


「少しだけ……今より少しだけ大人びたあなたがいます。その少し離れた所に、複数のご令嬢……」


そこへ、さっと駆けてきた女性が、アルフレッドの隣にスッと立ち止まった。後ろ姿なため顔が見られず、誰なのかまだはわからない。


「あなたの元に駆けてきた女性が立ち止まったわ……彼女の手を取ったあなたは、とても優しい笑みを向けています。この方かもしれませんね」

「それは、誰だかわかるか?」

「いいえ。後ろ姿しか見えません。一つ言えることは……赤髪の女性ではありませんね」


グリージアの貴族に絞れば、赤髪の女性といえばヴァネッサ・カニンガム。彼女しかいなかったはず。
とすれば、この情報だけで私の言いたいことは伝わるはずだ。





< 139 / 260 >

この作品をシェア

pagetop