婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「そんな格好をして、どこへ行く気だ?」


訝しげなヴィンセントにも、もう遠慮も取り繕う必要もない。失うものなんて、もうなにもないのだから。


「私、ここを出ていくわ」

「出ていく?ここを出て、どこへ行くのか?あてでもあるのか?」


ヴィンセントはこんなことになっても、私を見放さなかった唯一の他人だ。日に一回は私の元を訪ね、声をかけてくれた。


「あてなんてないわ。けど、ここにいたって私に未来はないもの。私、ここに縛られたくないの。もう決めたの。西へ行くわ」

「未来って……俺がいる。俺は、セシリアを信じている」

「ありがとう。けど……ごめんね、ヴィンセント。私がそばにいたら、あなたまでなにを言われるか……」


申し訳なさに、伏し目がちになってしまう。

私がいたら、彼の婚約者もよく思わないだろう。やはり、ここにいてはいけない。




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