伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 エレナは抵抗し、膝をつきつつもかろうじて頭を上げた。

「お待ちください。何かの間違いです。本日、父は病で不在ではございますが、わたくしはまぎれもなくシュクルテル伯爵家のエレナ、エレナ・エル・パトラ・シュクルテルでございます」

「わしが宮廷大臣であることも知らぬような小娘が伯爵令嬢を名乗る資格などあるまい」

 大臣?

 このおじさんが?

 どうして誰も教えてくれないのよ。

 周囲を見上げても、カミラたちは口元に冷笑を浮かべながら、屈辱的な格好をしているエレナの姿を見下して喜んでいるばかりだった。

 味方など誰もいない。

 頼りになるのは侍女だけなのに、やはり姿を見せない。

 ミリアはいったいどこなの?

 こんなときこそ主人の窮地を救うべきじゃないの。

 すると、取り巻いていた人の壁がさっと引き、華麗な衣装に身を包んだ見目麗しい青年が姿を現した。

「ヒューム大臣、いったい何が起きたのだ?」

「これはウェイン殿下、恐縮でございます。クラクス様に対し、この女が無礼を働いたようでして」

 殿下?

 ということは、この御方も王子様?

 あんな子供と違って、わたくしにふさわしい年頃じゃないの。

 わたくしの婚約者は本当はこっちなんじゃないの?

 エレナは衛兵におさえつけられながらも、若者に精一杯の微笑みを向けた。

「この者は?」と、若者が屈んでエレナの顔をのぞきこみながら大臣にたずねた。

「伯爵家の者と名乗っておりますが、定かではございません」

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