Young days
伊織は着替えると、冷蔵庫から水を取り出した。


『ちょっと海見てくる〜。』


『もうイカ刺し出来るのに〜。』


『後で食べる。ごめんね。』



伊織が海を見に行くと言う時、母は止めない。


通りを渡り砂浜まで1分ちょっと…。
それでも冷蔵庫から持ち出したペットボトルの水はもう既に汗をかいている。


夏休み前の平日という事もあり、人はピークに比べて少なめだ。波打ち際を歩いていると、遠くから名前を呼ぶ声に気付いた。


『伊織〜!』


『あっ。』


olu'oluでBARの準備を始めていた秀晴だった。


『ヒデさん。』


秀晴が電飾のスイッチを入れると昼間とは違うライトで飾られたオシャレなBARへと姿を変える。


『ホント海が似合うJKだなッ。伊織は。』


『えぇッ?』


『今年も頼むわッ。olu'olu。』


『あっ、うん。今日ナルから聞いた。全員参加だよ。』


『おぅ。マジ助かる。なんたってお前らバイト代かかんねんだもん。持つべきもんは甥っ子と連れって言ったもんだ。』


『何それッ…そんなの聞いた事ないよ。』


『あ、そう?』


『それに…それを言うなら、姪っ子も入れなきゃ。莉乃さんも手伝ってくれるって…。』


伊織は出来るだけ笑顔を見せたが、無意識に海へと視線を向けた。


『あぁ…莉乃な…。あいつは昔からここが好きで。でもあれだよ?アイツももう成人してるしさ、出来れば夜の部でって思ってんだよね。』


『えっ?夜?』


『そっ。BAR olu'olu の方でね。あいつ目当てで客増えそうじゃん?昼間はペンションの方手伝いたいからって。まぁ、俺ももう若くねぇ〜し、朝までとかシンドイのよ。莉乃に朝頼めないってなると、俺は寝坊も出来ない夏になるって話。とは言え無駄に働いてくれちゃうお前らが居なきゃ心細い訳。』


『…じゃ、莉乃さんとウチらは被んないって事?』


『なんか不満?』


『あっ、いやッ。…がっかり…するなって。流唯が。』


『あぁ〜。でも嘘はついてなぃ。実際莉乃にはココ手伝ってもらうに違いねぇ〜し。入れ替わりで顔合わすぐらいの事あんだろ?そんぐらいは目〜瞑ってやれ。』
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