Young days
衣千華は伊織に喝を入れて帰って行った。


伊織が店のドアを開けると、父が"おかえり"と言い、伊織も"ただいま〜"と答えた。


『ねぇ、トトさぁ…。』


『ん?』


『私って、ドルフィン継ぐの?』


『……何の話?』


真面目に問う娘に父は目を丸くし数秒見つめ合った。


『だよね…。』


そう言って困った表情で自分の部屋へと去って行った娘を父はただただ目で追う事しか出来なかった。



階段を登りながら伊織は独り言が漏れた。



『自分でも分かんない事トトに聞いても分かんないよね…。』



その頃父は…

『ママ〜?ママ〜!』

と、妻を呼んでいた。





『…時間が…ない…か…。』


伊織はベッドに倒れ込んだ。


『…無理…無理無理無理無理〜ッ‼︎』



伊織ざ思わず叫んだ声に父は慌てふためき、負けじと叫んだ。


『ママ〜ッ!ママ〜ッ‼︎』


丁度、買い物から戻った妻に、父はこう言った。


『な〜に!?外まで聞こえ…』


『ママ〜ッ‼︎どこ行ってたのぉ?』


『どこって、魚松でイカ買ってくるって…』


『あぁ…そうね、そうね、そう聞いた…。
じゃなくて〜。』


『な〜に〜。落ち着いてよ〜。』


『いっ、伊織がね…。』


『伊織?伊織がどしたの?』


『"私、ドルフィン継ぐの?"って…。』


『…で?』


『困った顔してさぁ、部屋行っちゃて…突然、"無理無理無理無理〜"って大声で叫びだして…。そ〜んなに嫌がるなんて…地味にショックだよぉ〜。始まっちゃったのかな〜あのぉ〜反抗期ってゆ〜の?』


『な〜に言ってんのぉ!別にここは私らの趣味の延長で始めた様なもんなんだから、伊織が"卒業したらドルフィンで雇って"って言い出した時も、好きにしなさいって…。反抗期も何も、元々店継いでもらおうだなんてこれっぽっちも思ってなかったでしょ〜?な〜に勝手にショック受けてんだか〜。』


母はあっさり解決した。


『あぁ、そりゃそうだ…。じゃ何であんなクエスチョン投げたの?』


伊織の父は少し天然なのかもしれない。
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