愛がなくても、生きていける



「だからいつも頼れるのは自分だけだったし、甘える相手もいなかった。そうやって過ごしてきたら、頼り方も甘え方もわからない、かわいげもない人間になってた」



親の代わりに下の子達を見てあげなければ。そんな強い責任感は、彼女の弱さを縛り付けてしまったのだろう。



「みんな最初は、見た目に寄ってきたり『しっかりしてるところがいい』って好意を寄せてくるんです。

……だけど時間と共に、『冷たい』『かわいげがない』『愛情が感じられない』って言って結局離れていく」



つぶやく里見さんの目は悲しげで、窓の外の灰色の空を切なく映す。

今にも泣き出しそうな空が、彼女の眼差しに重なった。



「恋愛するたび、このままの自分じゃ愛されないって知って傷ついて。そんなことを繰り返すくらいなら、ひとりでいい」



このままの自分じゃ、愛されない。

その言葉は俺の心にも共鳴した。



……同じ、だ。

相手から言われてきた言葉や、これまでの境遇は違えど。人の言葉に打ちひしがれて悲しくなって壁を作る、そんな彼女と自分が重なった。



みんな、そうだ。

見た目に寄ってきたり、『優しそう』と好意を寄せる。

それは、波風立たずに生きる俺の外面でしかないのに。



だけどいざ付き合い、時間が経てば『つまらない』。

少し怒ったり喧嘩をすれば『イメージと違う』と否定する。

それを繰り返すたび心は疲弊していって、本当の自分とはなんなのかわからなくなる。

好きな人の前ですら、繕った自分でいるべきなのか。

迷い悩み、心が削られていく。



だけど……だからこそ今、そんな寂しげな目をする彼女に、言いたい。



「じゃあ俺は、いつか里見さんが自然と弱音をこぼせたり甘えられる人間になるよ」

「え……?」

「何ヶ月、何年先になるかなんてわからないけど。どんなときもそのままの里見さんとそばにいられるように」



かわいげがない、なんて思わないよ。

いつもの冷静な表情も、時折みせる笑顔も、どんな里見さんも大切だ。

日々の積み重ねの先に、いつか、きみの涙や弱さが見える日がきたらそれも一緒に抱きしめるだけ。


  
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