愛がなくても、生きていける
行為を終え、ベッドの上でふたり素肌のまま布団にくるまり肌を寄せ合う。
心と体が満たされた気持ちと、程よい疲れの中、まどろみながら視線を上げた。
ベッド横の出窓から入り込む満月の明かりが、窓辺の花とふたりの肌を白く照らしている。
「部屋に入った時も思ったけど、いい香りがする」
「花の香りですかね。うち実家が花屋で、時々余った花持って帰ってきて飾ってるんです」
そういえば、実家が自営業だって言っていたっけ。
「里見さんは、その花屋の跡継がないの?」
「長女だし、いずれはって考えて時々店も手伝ってるんですけど。でも母親が『婿連れてこない限りは跡なんて継がせない』って」
「それは手厳しい」
年齢的に、ご両親から結婚をせかされているのだろう。
俺自身も実家に帰るたび『あんたもそろそろ結婚して……』と親から小言を言われているだけに、共感するように苦笑いをした。
「花屋かぁ……たしかに、里見さんによく似合う」
「そうですか?」
「うん。凛としてて、可憐で。里見さんは花みたい」
決して派手では無い、けれど一輪でもそこに佇むだけで目を引くような美しさを持った花。
それをイメージして笑って言った俺に、里見さんは少し照れ臭そうにこちらに背中を向けてしまった。
里見さんは照れると目を逸らすんだな。なんとなくわかってきたぞ。
「……私に花が似合うなら、中村さんは『太陽』ですね」
すると、里見さんはぽつりとつぶやく。
「太陽?」
「明るくて眩しくて、自然と人を寄せ付ける太陽みたいな人。……近づきすぎると、焼け落ちてしまいそうな、人」
花と太陽。それは同じ自然のもの同士なのに、どうしてか距離があるような言い方をする里見さんに、俺は彼女を背後からぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫、ここにいる。焼け落ちたりなんて、しない」
黒く長い髪にそっとキスをすると、彼女は背中を向けたまま俺の手をぎゅっと握った。
俺はここにいるから。だから、きみにもそばにいてほしい。
その想いを込めて、里見さんの白いうなじにキスをした。