スイレン ~水恋~
ここの参道の桜並木は樹齢100年とかで、満開の頃は白に近い花が零れんばかりに咲き誇るらしい。残念ながらもう葉桜だけど、柔らかな緑が繁り空は晴天で、本日はお日柄もよく。

本殿で斎主様のお清めのお祓い、三三九度、玉串を捧げたりと厳かな神前式がつつがなく執り行われ、お兄が少しだけ遠くに離れちゃった気がする。隣りに立つ白無垢の花嫁さんは、はにかむように笑んでは幸せそうに。あたしは泣きたいのを我慢して、お兄と目が合えば満面で笑み返した。妹のプライドに懸けて。

その後の披露宴はさすがに普通のホテルや式場っていうわけにはいかず、馴染みの料亭のお座敷を貸し切って、親族と身内と新郎新婦の知人だけで席をもうけた。

義理の姉になった、あたしとは四つ違いの杏花(きょうか)さんは、千倉と古い付き合いの菅谷(すがや)のおじさまの紹介で。留め袖に着替えお化粧も直した彼女は、まともに見ると涼やかなスレンダー美人だった。

「ふつつかな義姉ですけど梓さんにも認めてもらえるように、これから淳人さんを一生懸命支えていきます。よろしくお願いしますね」

歳下のあたしに三つ指ついて綺麗に頭を垂れたのを、無下にするほど子供じゃない。

「・・・こちらこそお兄をよろしくお願いします」

末永く・・・とは言えなかったけど。そのくらいは赦してよねお兄。

新婦自らわざわざ席を回り、お猪口に()いでくれたお酒を飲み干したあたしは。半分は諦めの境地と、煮え切らない思いを()い交ぜにして笑顔を取り繕った。

全力で褒めてあげよう。“お兄はあたしのだから!”・・・ってここまで出かかったのをよく堪えた自分を。
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