エセ・ストラテジストは、奔走する
「……千歳。」
「は、い。」
茅人は、よく私の頬に触れる。
まるで擽るように、確かめるように優しく添えられるそれは、全然嫌じゃない。
でも、いつもより少しその熱が冷たい気がして
思わず彼の形の整った瞳をじ、と見つめてしまう。
「なんかあるなら、言って。」
「……へ?」
「何も無いなら良いけど。」
「……、」
どこか寂しそうに聞こえたそれに、
胸の奥の方がきゅ、と鳴る。
そうだ、私達は言葉が足りなくて、沢山すれ違った。
私が今しようとしてる作戦の目的は、
茅人への想いを伝えるためのものの筈。
彼を不安にさせるのは全然、意味がない。
私はやっぱり、
作戦計画者ストラテジストにはなれそうに無い。
「……茅人。」
「ん?」
「あの、私、また懲りずに作戦を…立てていて。」
「うん。」
「さっき電気消したのは、その、ムード?を作るところから大事って聞いたからで。」
「……なんのムード?」
狭いリビングの真ん中で、グレーのラグの上に2人向かい合って座る体勢になった時から、茅人はちゃんと私の言葉を受け止めてくれる。
「茅人…、あの時私が言ったこと、
気にしてるでしょ…?」
「あの時?」
「“飽きられたのかと思った“って、」
「……気にしてるというか、俺が悪いから。」
困ったように笑って、私の髪を撫でる茅人はやっぱり
表情が切なく歪んだ。
それを確認したら、胸はやはりきゅ、と音を立てる。
「大事に大事にしてくれてるって分かる。
すごく嬉しい。」
自惚れじゃなくて、
真っ直ぐに愛情を向けてくれている。
そのかけがえのなさは、
もう充分すぎるほど分かっている。