エセ・ストラテジストは、奔走する
緊張から声色が固いままそう言うと、茅人は数回の瞬きの後、少しだけ目尻を下げて頷いた。
此処から、だ。
此処からが、大事。
座った状態のままそう唱えた後、着慣れたパジャマをきゅ、と握りしめて唾を飲み込んだ。
「でも私、その、
いつも一緒に寝るのも幸せだけど、」
「………うん?」
「えっと……、」
「………」
続きを伝えようとすると、言葉が詰まる。
……な、なんて言えばいいの!?
言葉を選ぶのが難し過ぎる。
世の中の彼女達は、彼氏にどうやって伝えているのだろう。
しかもよく考えたら作戦2以降(勝負下着と押し倒す)は、作戦1が成功してこその話だ。
あの女王の作戦は、そもそも私にはハードルが高すぎた。
すると、そのまま黙りこくった私の直ぐ傍から、ふ、と息を溢すような笑い声が聞こえて、思わず視線を上げる。
「……茅人?」
基本的にポーカーフェイスを貫く彼の口角が少し、上がっている。
彼の綺麗な瞳とかち合った瞬間、ぐ、と腕を引かれて、予想していなかった引力に逆らうことなく身体は前方に倒れこんでしまった。
「……千歳。」
「は、はい。」
いつの間にか両膝を立てて座る彼にすっぽりと身体を預けて、抱きしめられている状態を自覚すると、脈拍はどんどん速まっていく。
「…心臓の音、速い。」
「そ、そりゃ、作戦立ててたから。」
出だしから失敗したけど。
私の言葉を聞き終えると、再び、ふ、と心地よい息遣いが頭上から聞こえて、抱きしめられる腕に力がこもる。
「……俺も緊張してる。」
そのまま耳元でそう告げられ「え?」と短い返事と共に、茅人を見上げた。
いつもみたいに頬に優しい手が自然と触れて、その温度をじっと感じていると、顔を少し傾けて近づいた彼に唇を塞がれた。