エセ・ストラテジストは、奔走する
◽︎

「…千歳?」

「……っ、」

回想してたら、お風呂からいつの間にか上がったらしい茅人に顔を覗き込まれていた。

「どうした?」

「…いや!何も!!」

「……」

す、と彼が離れていく瞬間に私と同じシャンプーの香りが漂って、亜子ちゃんの作戦もぐるぐる頭を回る中で、挙動が不振になる。



“作戦1、ムードを作る“

……普通に考えて、
ムードって無理やりつくられるものなの?

ランプにもなるアロマディフューザーは前から欲しくて、ちょっと奮発して買ってみたけどそれ、どういう流れでつけるの?


今更止まらない問いかけの中で、心臓を急激にバクバクさせてしまうと、もう気が動転しすぎて、その勢いのままリビングの電気をパチンと消してしまった。




「……え、なに。」

「…ま、間違えました。」



急に暗い空間を作ったことによる気まずい沈黙に耐えられなすぎて、またすぐに電気をつけて、へらっと笑って誤魔化した。

……ただ電気を消して、つけた女になってしまった。


ジ、と茅人からの真っ直ぐすぎる視線が痛い。



待って、本当にこの作戦たち、無理だ。

だって後2つ残っている作戦なんか、もはや作戦では無い。

ちょっととりあえず落ち着こうと、
2人分のお茶を淹れるためにキッチンへ足の向きを変えようとすると、ぐい、と腕を後ろから引かれる。



「……え、」


そのまま頬に彼の綺麗な長い指が、そうっと触れた。



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