エセ・ストラテジストは、奔走する
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「……お母さん。」
「なに。」
「お父さんには、なんて言って来たの?」
感動しつつ、嬉しそうにランチを完食した母は全く気にせずデザートのメニューを広げている。
まだ食べる気だこの人。
「え?東京行ってくる、って。」
「…止められなかったの?」
「……まあ"なんでお前が行くんだ"って、
呆れては居たけど?」
ケロッと告げた母の言葉に、溜息が漏れた。
こんなところで父と意見が合いたくはなかったけど、同感でしかない。
「ほんと、そうだよ。
私、大事な話があるからってお母さんにも前から言ってたでしょ?」
___『"結婚前提に一緒に住みたいです"
それを俺が千歳の両親に伝えに行くのは、当たり前だと思うけど。』
きちんと順番を考えて進めようとしてくれている茅人を巻き込んでしまってるのだと、その気持ちを込めたら自ずと顔に険しさが増した。
テーブルを挟んで向かい合った母は、そんな私を見てふと堪え切れないと言わんばかりに笑った。
「何笑ってるの。」
「…あんた就活の時、"絶対東京行く"って私とお父さんに言ってきた時もそんな顔だったなと思って。」
「……なんで話逸らす。」
「あんたはずっっと、茅人君にぞっこんなのよねえ。」
「…何、急に。」
母親から改めて言われるとこんなに恥ずかしいとは知らなかった。
しかも間違ってないから余計に居たたまれない。
隣の茅人がどんな顔をしているのかも、怖くて確認できず、ただひたすら母を見つめた。
「…大体ね、また帰ってくるとか言って、そんなぽんぽん交通費にお金使うんじゃないわよ。
苦社会人のくせに。」
「…苦学生みたいに言わないでよ。
前に比べたらマシな生活できてます!!」
「…知ってる。」
「え?」
ランチプレートとセットだった食後のアイスコーヒーをストローで一口飲んだ母が、視線を上げる。
その表情がさっきまでとあまりに違って真剣で、声だって凄く冷静なトーンになって。
「千歳。」
「…はい。」
それなのに最後は優しい顔で私の名前を呼んだりするから、従うように返事をした。
「弱くて臆病なくせに、不思議なくらい頑固な気持ちであんたが好きを貫いてきた人のこと、私に教えてよ。」
「……、」
「茅人君と、これからどうやって生きてくのか、私に聞かせて。」
____それを聞きに、此処まで来たの。