エセ・ストラテジストは、奔走する
「……でも、私達もやられっぱなしじゃいられない。」
そしてまた私の名前を呼ぶ母の声があまりに穏やかで、先ほどから2人の会話について行くのにいっぱいいっぱいな私は、うまく反応はできない。
「これは、私とお父さんから。」
「……、」
「結婚祝い。ちょっと気が早いけど。
準備とかこれから沢山お金かかるんだからね。
なんか“偶然“、茅人君がこの間私たちに送ってくれた金額と一緒になっちゃったけど?」
そう戯けて楽しそうに言った母が、
お洒落な白テーブルに差し出した通帳。
「……まさか本当に実行されるとは。」
「言ったでしょう。あなた達2人に改めてお祝いとして渡すわって。
でも茅人君が肩代わりしてくれたって知って、
主人の方が煩かったかも。
“こんなもん受け取れるか“って。」
「………敵わないですね。」
珍しく空気を揺らして笑った茅人に満足そうに微笑む母の笑顔が、どうしてもぼやけてしまう。
いつの間に、そんな話をしていたの。
私にも、言ってよ。
みんなだけちゃんと作戦設計者ストラテジストで、また置いてけぼりだ。
問い詰めたいことしか無い。
そもそも何も気づいてない自分が
やっぱり不甲斐ない。
____でも。
「……お母さん。」
「…何?」
「私は確かに弱いし臆病だし、肝心なことにいつも
気づけてないバカだけど、」
「ほんとよね。」
そこの相槌は要らないんだけど。
上目遣いで睨んでも、
目の前の母はあまりに優しい微笑みの中にいる。
「茅人の前では、絶対いつも誠実で居たい。
この人が笑ってくれたら、
私、一生頑張れる気がする。」
嘘のない愛情を、
知らないうちにもいつも注いでくれるから。
私はそれをちゃんと抱きしめて、
応えていける人間になりたい。