エセ・ストラテジストは、奔走する



頑固な父は、大体無口だ。

あまり多くを語らないくせに、私が東京に行く時、
頑なに条件だけ突きつけて取り付く島もなかったその後ろ姿に、心配をかけていることも分かっていたけど、何度も苛立った。



「……なに、この、封筒。」

淡いピンクの可愛らしいそれは、 
あまりに父とは結びつかない。


「なんか家の中ゴソゴソ探してたわよ。
今まであんたにも茅人君にも悪かったって思ってんでしょ。お祝いの気持ちなんじゃない?
示し方が下手くそで笑うわよね。

ちなみに朝、私のこと見送った時の
“なんでお前が行くんだ“は、
多分、“なんでお前だけ行くんだ“ね。

娘達に会いたかったんでしょうけど、
仕事立て込んでたし、容赦なく置いてきてやったわ。」



ケラケラと笑って言う母は、やはり強い。

「…いっつも、
お父さんもお母さんも、分かりづらい、」


もっとちゃんと文句を言いたいのに。

握りしめた封筒が妙にあたたかくて、折角さっき茅人が拭ってくれたのに、また涙が止まらなくなってしまった。


「__茅人君、娘をよろしくお願いします。」


そして深々と頭を下げ、茅人がゆっくり確かめるように「はい」と応えたら、結局、1番の作戦設計者|《ストラテジスト》はとても満足そうに破顔した。

< 117 / 119 >

この作品をシェア

pagetop