エセ・ストラテジストは、奔走する
《両親を連れてくるの無理だから、この作戦は厳しいです。》
《従兄弟いるって言ってたのは?》
《親戚なら誰でも良いわけじゃ無いでしょ、と。》
亜子ちゃんは、そうは言いつつ「本当に必要なら連絡して」と最後は言ってくれたけど、彼女に迷惑をかけるのは、やはり違う気がする。
《まあ確かにそうだな、つかこの作戦は流石に分かりやす過ぎてダメだな。》
ダメだと思うものを投げてくるな、と
素で理世からのメッセージに突っ込んでしまった。
《美都、寝てるのかな。》
《多分。地元戻って、今仕事の引き継ぎ頑張ってるから。残業もしてるっぽい。》
《そっか、大変だね。》
《頼りない親友も抱えてるからより一層な。》
《悪かったな。》
《おい千歳。次の作戦で勝負決めるぞ。》
《……何?》
《あ、気になる?じゃあもう発表するわ。》
ほんと、この男が生き生きとしている時は嫌な予感しかしない。
何一つ上手く進んでない作戦で、というかそもそも作戦に無理しかないし、私は心折れまくってるのに、あんたのそのめげないメンタルは何。
美都を陥落させたのも、頷けてきた。
ピンポーン
「……え。」
そんなことを考えていると、予期しないインターフォンに、素で声が漏れた。
上京する際、全く物件の条件に関して折れない父に“禿げろ!“と思ってしまったこともあったけど、やっぱりオートロックやインターフォンのある住まいの安心さを今更、実感している。
そっとカメラを覗いて、
「…え、」
再度、驚嘆の声を上げてしまった。