エセ・ストラテジストは、奔走する
大丈夫だよ、そう伝えて電話を切ろうとした瞬間、
「___千歳。」
「っ、」
蹲み込んでいた背後から届いた声の主なんて、当然分かっている。
スマホ片手に振り返ると、ちょっと寝癖のついたままの茅人が、相変わらずのポーカーフェイスを携えて立っていた。
「……、おはよ、」
咄嗟に電話を切って、心で「理世すまん」と思いながらそう挨拶しても彼は特に返事をせずただ私の傍まで近づいて、目線を合わせるように座った。
「…電話。」
「え?」
「電話、誰?」
「……え、」
いつだって言葉は短い。
表情も、そんなに大きく変わったりはしない。
"__あの、ちょっと良いですか。"
出会った頃から、眉目秀麗な顔立ちをして
どこか現実離れをしたそれが、冷たく見えるくらいのポーカーフェイスで。
それなのに、尋ねる低い声はどこか穏やかに届いたことを鮮明に思い出せる。
そっと頬に伸びた手が震えていたような気がするけど、それは多分、私がずっと心を頼りなく揺らし続けているからだろう。
「なんで泣いてんの。」
「…なんでも、無いよ。」
いっそ。
触れあった先から、
私が抱く気持ち全てが、伝わってくれれば良い。
そうすればもう、私は楽になれるのだろうか。
それとも突きつけられる現実に、
絶望してしまうのだろうか。