エセ・ストラテジストは、奔走する
「千歳、」
彼の大好きな声は、まるで愛しい者をそう呼ぶかのように錯覚してしまえる。
ずっと、この幻想の中に居て、自分を騙していたい。
__ピンポーン
「、」
その瞬間、鳴り響いたインターフォンが来客を告げる。
すく、と立ち上がった茅人がリビングのカメラを確認して「宅配便だ。」と教えてくれる。
“おはようございます宅急便でーす
すいません、ポストに上手く入らなかったんで直接お受け取りいただけますか!サインは不要です!“
「俺、受け取るから。」
「…ま、って…!」
宅配のお兄さんとのやり取りを終えてオートロックを解除した茅人が、そう言ってくれたのを咄嗟に止める。
"午前配達指定したから、そろそろ届くんじゃね。
ポスト投函かもだけど。マジで感謝しろ。“
「わ、私が受け取る。」
不自然極まりないけど、理世の言葉を思い出したらそうせずには居られない。
焦った声の私をじ、と見つめた茅人は、「分かった」とだけ無表情のままに答えて、すぐに翻してリビングへ戻っていく。
心臓が嫌なリズムでずっと打ち続けている。
それから数分後、部屋の前まで到着した宅配のお兄さんは、素晴らしい笑顔と共に、雑な作戦の品物を届けてくれた。
幸い茶色の袋に梱包されているから、中身はすぐにはバレない。
そのことにひとまず安堵しても、先ほどからの私の挙動は、不信感を募らせているに違いない。