エセ・ストラテジストは、奔走する
茅人。
上の空だったのは、心此処にあらずだったのは、
私が引っ提げた、あまりに脆くてすぐにバレちゃいそうな作戦たちを、どうやって実行したら良いのか考えてたからなんだよ。
スマホのトークも、電話も、理世に関しては、協力してくれてるのか遊ばれてるのかはイマイチ微妙だけど
、結局は私を心配してくれてる優しい友人2人とのやり取り、ただそれだけで。
「…千歳。その涙は、何?」
やっとこっちを向いてくれた彼の顔を私はもう確認できない。
そのくらい、決壊した涙腺から流れる涙で視界が濡れていた。
「俺と、別れたいってこと?」
「……、」
フルフル、首を横に必死に振ってなんとか涙を拭うけど、古びたパジャマの袖口では、水分を吸収しきれない。
「俺は、千歳がわからない。」
クシャリ、髪を少し乱して吐き出した言葉があまりに痛くて、胸が張り裂けそうだった。
「…そう、だね。茅人には、分からないと思う。」
「何が。」
「でも、私は茅人の思ってることは、分かる。」
「…は…?」
「別れたいのは、茅人の方、でしょ?」
そう言って、ぐい、と雑に涙を拭って視界をクリアにしたら、驚きの色を瞳に混ぜた彼がこちらを見つめていて、私は無理矢理に笑顔を作った。
最後にやっと、こんな風に視線が交わってしまうのは皮肉だ。
「…茅人。
私、ここ最近ずっと、
ある目的のために色んな策を講じてました。」
「……目的?」
「____“プロポーズしてもらうこと“」
私が吐き出した言葉は、勿論、
たった1人、茅人にだけ届いて。
もっと目を見開いた彼に、また涙腺が緩みそうになったから、笑顔を貼り付けて、拳に力を込めた。
___最後は、ちゃんと自分で終わらせなければ。