エセ・ストラテジストは、奔走する
◽︎


「…高校に、行くのかと思った。」

「まあそれももちろん私たちの母校だけどね。」

「理世と出会ったのは、大学だもんね。」

「……茅人君ともね。」


何も不自然なく、美都が笑ってそう言ってくれるから
私も眉を下げて笑った。


「懐かしいな。」

県庁所在地がそのまま名称になった国立大学。

私や美都の地元は、ここから少し離れた田舎だけれど
大学周りはそれなりに栄えている。


土日でも学生は沢山いて、特に困ることなく大学内に足を踏み入れた。


「ねえ、千歳ちゃんのバイト先行こうよ!」

「ええ?」

今日の美都は、なんだか元気がある。
母校ハイだろうか。

ぐいぐいと引っ張って楽しそうに進む彼女に、表情も心も柔らかくなった私は従うように足を進めた。

「閉まってる!!」

「あ、そうだ、土日休みだったそういえば。」

「やる気ないねえ。」

「まあ、生協の書籍部だから。」


辿り着いた場所は、数年前、私が働いていた時と何も変わっていない。
今日はシャッターが閉まってるけど、

大学内にある、なんの変哲もない生協はいつもそれなりに賑わいを見せる。


食料などが販売してある購買部の隣に、書籍部が隣接してあって、私はそこで大学2年の頃、アルバイトを始めた。

< 36 / 119 >

この作品をシェア

pagetop