エセ・ストラテジストは、奔走する
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「…え?」
「今月までで、大丈夫です。」
そこから数ヶ月が経った頃。毎月発刊される文藝春秋を、レジでいつものようにお会計をしているとそう伝えられて、鈍器で頭を殴られたような衝撃に、立っているのも精一杯だった。
「なんでですか・・・?」
「元々これを買ってたの、好きな作家が短期集中で小説の連載をしてたからで。
それが今月で終わるので。」
至極真っ当な理由を告げられて、首が垂れすぎてそのまま取れそうな衝動を必死に抑えて、ついでにジワジワ刺激され始めた涙腺も堪えて、お釣りをなんとか渡す。
"メールだと研究に関するものが飛び交って紛れてしまうと嫌だから"
彼はそう言って、電話での入荷のお知らせをお願いした。
携帯の番号に毎月かける役目だけはパートのお姉様方にニヤニヤされたけれど、何とかいつも死守して。
“はい“
“あの、今月も無事に入荷されました。“
“ありがとうございます。取りに伺います。“
もはや雪がそこまで酷くなくてお知らせなんか必要ない時も、お節介な電話に、律儀にそう返答をしてくれる彼への気持ちは、当然降り積もっていった。
好きな人ができたと報告してからずっと、
「そんなイケメン他が放っとくわけねえだろ早く唾つけろ」
と汚い言い方をしてくる理世に、抵抗している場合じゃなかった、と後悔ばかりがもくもく膨らむ。