エセ・ストラテジストは、奔走する
「そこから、必死に、やったけど。
私の不純な動機でうまくいくほど、就活は甘くないね。」
あまり今まで語ってこなかったことを、美都に告げたら、とっくに震えていた言葉が、擦過傷のように胸を刹那に痛めた。
選考が始まって、毎日お祈りメールが次々と届く日々。
焦りばかりが募る中、こっそり登録した東京の派遣会社から採用通知がきた時、飛び跳ねて喜んだ。
でも、派遣の給料で東京で一人暮らしをするのは、あまりに厳しい。
それでも東京に行きたいと主張した私に、追い討ちのように父が出した条件が
「古くても必ず2階以上、駅まで徒歩5分圏内、
オートロック付」
絶望的な状況を救ってくれた母の“軍資金“の話も含めて、自分の将来をしっかり見据えて就活をする茅人には、なに一つ、言えるわけがなかった。
理世は「どうして同棲しないのか」と私に尋ねるけど。
そんな選択肢は、私には一つも持つ権利が無い。
私の我儘だけで勝手に「延長」されてしまった時間だから。
“これ以上、彼の迷惑にはならないこと。“
それを何よりも1番、ずっと考えてきた。
「…美都。」
「うん?」
「この間、お茶した時。
茅人と、“そういう話“は、進んでるの?って、聞いてくれた、でしょう?」
「……うん。」
「進むはずがないの。
__だって元々、
もうとっくに終わってるはずだったんだから。」
どうしても手放せなくて。
しがみついて、
縛り付けていたのは、紛れもない私だ。
ポロポロ溢れる涙が、
外気にすぐ冷やされて冷たくて、痛くて堪らない。