エセ・ストラテジストは、奔走する



「千歳ちゃん。それなら、どうして、私や理世の作戦に乗ったの?」

私の手を握る美都の声まで震えている気がして、
余計に涙が出た。


"プロポーズされるよう、
お前がいろんな作戦使って仕向けるんだよ。“

理世の言葉を聞いた時、純粋に絶対、そんなの私には無理、そう思う気持ちと。


上京してきて、もうすぐ4年目を迎える。

もしかしたら。

あの頃から、彼の未来の中に、
私は少しくらい、居られるようになってないかな。


「…期待も、ちょっと、してたかもしれない、」




それでも。

この作戦は、あまりに怖い。

怖さの方が、期待なんかより何百倍も大きかった。


あまりに雑で、クオリティに問題しかない。
それが明るみになって、彼にバレる可能性は高すぎた。

今度こそ、拒絶をされた時。

___私は、ちゃんと、茅人の手を離せる?




“あんた。この作戦自体、本当に乗り気なの?“

“結婚したいって思ってること、
相手にバレるの何をそんな怖がってんの?“


亜子ちゃんの言葉も、理世の言葉も、本当にその通りだ。

ずっと迷って、悩んで、それを繰り返してた。

(エセ)作戦設計者(ストラテジスト)の結末は、覚悟していたくせに、全然、涙は止まりそうにない。
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