エセ・ストラテジストは、奔走する



「…美都、あのね、東京って便利なの。」

「…うん。」

「理世が頼んでないのに送ってきたゼクシィも、ほんと、きっちり、すぐ届いたし。

…本を買うのに、入荷のお知らせなんか、もう、必要ない。

料理もできない、収入だってやっと、貯金ができるようになったくらい。

仕事でずっと働き詰めの茅人に、私東京来てから、何か残せたことあるのかな…っ」



忙しい彼に出会えるのは、月に数回。

その時、身体を求めてもらえたら。


それを自分の存在意義のように考えるようになったのはいつからだろう。




嬉しかった。

腕の中で大好きな彼に触れてもらえたらそれだけで
涙が出るくらい幸せだった。



___だから。

“今日は、しない、の?“

私は簡単に、不安になってしまった。


肌を重ねなければ。
本当の意味で安心を得ることができなくなっている私は、とっくにどうかしているし、歪んでいる。



__茅人。私のこと、まだ、どのくらい必要?

そんなこと聞きたくなるの、
恋人なのに、おかしいって。


本当はずっと、分かっていたの。

< 47 / 119 >

この作品をシェア

pagetop