エセ・ストラテジストは、奔走する
「…茅人、あの、」
「千歳、ごめん。」
「…え…?」
至近距離で私を見下ろす彼の顔が、痛みを堪えるように歪んでいた。
いつものポーカーフェイスは、当然崩れている。
「……千歳にはわざわざ言わなくたって、将来のこともちゃんと考えてるって、当たり前に伝わってると思ってた。」
そう言った彼の指がそうして私の頬にそっと触れる。
__嗚呼、それだけで。
彼は昔からずっと何も変わらないって、
今なら分かるのに。
私は、何を1人で雁字搦めになっていたんだろう。
涙を拭ってくれる指先が少し擽ったくて、更に私は泣き腫らしてカピカピになっている酷い顔だとそこで気がついて。
「離して」とお願いしたら「無理」と、
短くいつものように拒否された。
「…しかも、ほんと、最近死にたくなった。」
「!?な、何!!」
物騒な言葉を吐く茅人に焦って詰め寄ったら、ただぎゅ、と抱きしめられた。
「……茅人?」
「“いつもなら、こんなことしない“」
「、」
「ただ抱きしめて、
そんなこと彼女に言わせる男、何。」
"茅人、どうしたの。"
"…いつもなら、こんなことしない、でしょ?"
突然会いに来た茅人が、急に痛いくらいの力で抱きしめてきた時だ。
私は戸惑いの中で、そう尋ねた。
「急に味噌汁作るとか言い出して変だと思って、会いに行ったら、ただ抱き締めるだけでも、戸惑わせてる。
…どんだけいつも数少ない会える機会で、自分本位に触れるだけ触れて、千歳の気持ち置き去りにしてるか思い知った。」
至近距離で交わる彼の瞳は、頼りなく揺れてる中でも吸い込まれそうなほどに綺麗だった。
「……だから今週は、しなかった、の、?」
浅く、でも確かに縦に頷いた茅人に安堵から
「飽きられたのかと、思った、」
と頼りない声で言ったら、「そんなこと思わせてるのも最悪だ」と、再び抱きしめられる。