エセ・ストラテジストは、奔走する
東京に戻ってきて、春には4年目を迎える。
就職したのは、法人向けの製品が比重を占めるが、それなりに名の知られた電子機器を扱う会社。
そこそこ稼いではいる。
…でもそれが、日々の残業や休日出勤によって支えられていることは明らかで、酷使している身体を自覚していないわけではない。
「…お前は偉いよ。彼女の母親と約束した“軍資金“分まで金貯めて、それだけじゃ意味ないからって余裕も持てるくらいには更に金貯めて。」
「……」
真嶋はアルコールが回ってきたのか、つらつらと、くどい口調になってきた。
今でもたまにこうして酒を飲む友人は、そう多くは無い。
仕事に忙殺されてその機会はこの3年間あまりに少なかったし、断り続けていたら、誘われる頻度も減った。
それでもこいつだけは、なぜだかめげずに定期的に連絡をしてくる。
「…お前は優しいのに不器用だからなー」
「何の話だよ。」
「高校の時も、俺がテスト前にインフルで休んでた時、メッセージは全部無視するくせに1週間分のノートのコピーを、ただ何も言わず机の中に入れておく、みたいな。お前の優しさってそういう感じ。
見つけにくい、いじらしい。」
「よくそんなこと覚えてるな、気持ち悪い。」
吐き出して、枝豆に手を伸ばしたら不服そうに赤い顔をした男が口を尖らせた。
「親友として心配してるわけ、俺は。
お前、ちゃんと千歳ちゃんにも伝えてんの?」
「…何を。」
「好き、とか大事だー、
とかそういうことだろうがあ!
愛は儚く脆く、こぼれ落ちやすいんだからな。」
「………」
そう謎の言葉を告げた男はとうとう、目の前で泣き上戸になってしまった。
すごく面倒臭い。
どうやら最近、他に好きな人ができたと
彼女に振られたらしい。
「…今更、そんなことわざわざ言わない。」
「何をクールな整った顔して言ってんだ!!
余裕ぶっこいてると本当痛い目見るぞ。」
最後までくだを巻いていた男を、
半ば無理やり店の前でタクシーに押し込んだ後。
《今から行く。》
そう短くメッセージを打ち込んで、寒さの厳しい夜の中、帰り道を急いだ。