エセ・ストラテジストは、奔走する
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「今月までで、大丈夫です。」
「なんでですか・・・?」
「元々これを買ってたの、好きな作家が短期集中で小説の連載をしてたからで。
それが今月で終わるので。」
そして、次の日の午後。
こんにちは、とはにかんでレジをしてくれる彼女にそう嘘を含んだ説明をしたら、明らかに先程までの元気を失った、気がする。
そのままお釣りを弱々しく渡されて、
小さなうぬぼれが期待と共に顔を出し始めた。
毎月ありがとうございました、とお礼を言えば「役に立ててよかった」と笑って伝えられて、自分の嘘に罪悪感は募るけど。
…やっぱり、このままじゃ居られない。
「…俺の番号、覚えましたか。」
「え!!!」
この数か月で、書籍部の番号を覚えたのは俺の方なのに、そうストレートに伝えられない自分の臆病さには、ほとほと呆れてしまう。
「あ、あの、悪用はしません。」
何故だか狼狽えながら届けられた言葉を咀嚼して、頬が緩みそうになるのを堪えた。
…この人、本当にいつも斜め上の回答をしてくるな。
でもそれは。
そっちも”覚えてくれた”と、解釈していいのか。
俺は恐らく、恋愛の類いのことには、とことん向いていない、冷めた人間なのだと悟っていた。
「__悪用、してくれないんですか。」
まだまだ、富永さんに話しかけたいと好奇心や下心を持ち合わせてこの書籍部を訪れる男が他にも居ると知っている。
俺だって、そうだけど。
この人のことを、他にとられるのは、困る。
その気持ちに突き動かされて、口をついで出た言葉に、顔をみるみる真っ赤にした彼女は、死ぬほど可愛かった。