エセ・ストラテジストは、奔走する
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お互いに就活や卒論で忙しくて
会える頻度も以前に比べれば減っていた。
時間を合わせて落ち合ったカフェで、久しぶりに向き合って座る千歳に「東京で就職するつもりだ」とやっと伝える。
「そう」と確かめるように頷いた彼女との間に、決して心地の良いものとは言えない沈黙が生まれた。
遠距離恋愛の難しさを
経験したことが無いから俺は分からない。
でも、どんなに情報機器が発達して、
いつでも連絡を取ることが出来ても。
会いたい時に会って、
すぐに触れられないことの歯がゆさを
想像するのはそんなに難しくない。
だけど。
その厳しい恋愛を、それでも、選んでほしい。
俺は千歳を手放せない。
そう意を決して伝えようと、名前を呼んだ瞬間だった。
「茅人。私も、東京での就職を考えてる。」
静かに告げられた答えに、目を見開いた。
それは、俺が千歳とのこれからを考える上で
一番最初に捨て置いた選択だった。
都会は怖いし、目がまわる、そう言っていた。
住み慣れたこの場所が好きだと、
それは言わなくても伝わっていた。
そこから離れて。
____俺と一緒に、来てくれんの。
「…千歳。」
「東京、全然わかんないから、教えてね。」
困った顔で笑う千歳を見て、「分かった」としか言えないくらいには、胸がつまる感覚を悟られないように必死だった。
"東京の名の知れた企業に就職できて、
収入をできる限り早く安定させられたら。
____不明瞭で頼りない「未来」を
千歳が、少しは信じる材料になるだろうか。"
「不明瞭」なんて、もう言ってられない。
絶対に幸せにしなければと、勝手に覚悟を決めた。