エセ・ストラテジストは、奔走する
「…つまり、千歳はセックスしたいんだ?」
「なんてこと言うんですか!?」
「はあ?違うわけ?」
「……、」
何故だ。
私と亜子ちゃんは血の繋がりがあるはずなのに何故こうも、性格が違うのか。
あまりにどストレートに語られた言葉に、
スパークリングワインを吹き出すかと思った。
まだそんなに量も飲んで無いのに、
顔に集中的に熱が集まっていく。
「……何?
彼氏と想い伝えあったんじゃなかったの?」
「…うん。」
“あれ“から数週間が経って。
茅人は転職に向けて、引き継ぎを含め相変わらず忙しそうだけど、できる限り連絡を取り合って、週末は割と会えているし、いつも通り優しい。
『…千歳。』
『はい。』
『明日、どこいく。』
『え?』
『…休日、いつもあんまり出かけられてなかったから。』
『……良いの?』
『遠出するなら、朝からレンタカー借りる?』
先週うちにやってきた茅人は、
着なれたスウェット姿でスマホ片手にそう問いかける。
『朝、起きられるの?』
『千歳、俺が朝弱いって思ってるだろ。』
『…うん。だって弱いよ。』
『……予定があればちゃんと起きる。』
傍に座った私の頬をくすぐるように撫でた彼は
少し不服そうに瞳を細めた。
『何だろう。あ!ハンドミキサー見に行きたい。』
『……料理下手なのに?』
『料理下手だからこそ、
ああいうお助けグッズが欲しいんだよ。』
それよりこの人何回、
下手って言ってくる気なのだろう。
ちょっとムっとした顔で、反論すると「なるほど。」と何も反省していない返事だけして、息をこぼすように微かに笑う。