先生がいてくれるなら③【完】

指示通りの場所に到着する。


嫌な記憶が蘇ったことに、俺は思わず顔をしかめた。


そう、この場所は、立花が別れを口にした場所だったから──。


部屋こそ違うけれど、同じ施設の同じフロア。


なぜこんな場所を選んだのか、誰の策略なのか……。



扉を開けると、賑やかな音が流れ出してきた。


「藤野、遅い~!!」


俺を呼び捨てにして叫んでいるのは、もちろん倉林だ。


「お前らと違って俺は卒業しないんでね」

「じゃあ藤野も卒業しちゃえばいいんじゃね?」

「倉林くん、言ってることめちゃくちゃだから!」


俺だって一緒に卒業できるもんならそうしたいよ。


良いよなぁ、お前らは……。


無言で深いため息をついた俺を、数研のメンバーが気の毒そうに苦笑いしていた。


滝川美夜に「はい、先生は明莉の隣ね!」と促され、立花の隣に座る。


「先生、お疲れ様でした」

「うん、疲れた……」


立花の言葉にそう素直に呟くと、耳ざとくそれを聞きつけた倉林が「うわ、藤野、明莉の前でだけ態度が違いすぎる!」と叫んでいる。


うぜぇ。


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