冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
「三年前はなにもかも完璧に見える瑠衣の抜けてるところがかわいいなって思ってた。でも今は雰囲気が柔らかいんだ。悠翔と一緒にいるときなんか特にそう思う」

「そうかな……」

「ああ。なんか思い切り抱きしめたくなるようなかわいさ。そういうの俺にとってはたまらないけどな」

 頬に熱が集まるのがわかった。きっと首まで赤くなってる。

 こういう言葉から遠ざかっていた生活だったから、急に言われると……いや急じゃなくても恥ずかしくなってしまう。

「なあ、俺は? 久しぶりに会ってみてどう思った?」

 わたしはくるりと向きを変えると、膝を抱えて座った。そしてまっすぐ翔平を見る。

 はじめて出会ったときは、年上だなんて思わなかった。美しい平行二重の形のよい瞳。スーっと通った鼻筋に、薄い唇。それらのパーツが小さな顔にバランスよく配置されていた。肌もつやつやでずっと羨ましいと思っていた。

 さらに今は濡れた髪をオールバックにしているせいか、色気が半端ない。それに三年たって精悍な顔つきになった。美しさは損なわれておらず、より成熟した感じがする。

 アメリカでの日々がどのようなものだったのかは想像できないけれど、彼はわたしが思ってるよりもずっとたくましくなって帰ってきた。

「すごく……カッコいい」

「なんだよ、期待したのにそれだけかよ」

「ごめん、語彙力がなくて――キャッ」

 苦笑いを浮かべたわたしに、翔平が指でお湯をはじいて顔にかけた。

「まあいいさ。これから態度で示していくよ。俺がいい男だって」

 バシャと音をたてて翔平がわたしを引き寄せた。その勢いでお湯が大量に床にこぼれる。

「だから瑠衣。もう一回俺に惚れて」

 誘惑するような瞳にとらえられたわたしの体温が一気に上昇した。このままではのぼせてしまいそうなのに、翔平はわたしの鼻先に彼の鼻先をくっつけてきた。

「なぁ」

 少し掠れたねだるような声。彼がいつ〝そういう声〟を出すか経験上知っている。視線で声で指先で体の熱で、彼がわたしを誘う。

 そしてそれに抗えないわたしは、そのまま彼の誘惑に乗ってしまう。

 吸い込まれるように彼に唇を寄せ、そっと口づける。熱のこもった柔らかい唇。すぐに離れようとしたけれどそれよりも先に翔平がわたしの後頭部に手を回し固定する。より深くなるキスにギュッと目を閉じる。

「もっと、もっと欲しがって」
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