冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
 頑張りすぎか……小さい頃から頑張ることがいいことだって言われてきたから、肩の力を抜くのは難しい。

 でも少しずつ変わっていけたら……。

「さっきはごめんね。わたしや悠翔のために色々提案してくれたのに、頭ごなしにもったいないとかいらないとか言って」

 素直に厚意に甘えることができなくて、申し訳なかった。

「俺は意地を張ってたはずの瑠衣がこうやって甘えてくるとき、すげー幸せ感じるから気にするな」

「なによそれ」

 軽く睨んでそれから彼の体に自分の体を寄せた。

「こうやって誰かに寄りかかるのも、いいね」

「そうだ。普段はひとりで頑張ってるんだから、俺がいるときくらい休憩しろ」





 その週末。わたしと翔平それから悠翔は、姉夫婦の家に招待されていた。

 実家に正式に挨拶に行ったことを姉に話すと、三人を自宅に招待してくれたのだ。

 ずっと心配してくれていたもんな……。

 姉とは近所でも仲よし姉妹と言われていた。大人になっても食事やショッピング、恋バナ、ファッションやメイク、将来の話。わたしにとって姉は一番身近にいる友達のような存在だった。

 そんな姉にも悠翔の父親については、明かしていなかった。姉も無理には尋ねてこなかった。
わたしは今日までずっと姉のその優しさに甘えていたのだ。

 姉妹でキッチンに立ち、料理の用意をしながら久しぶりにゆっくり会う姉との会話を楽しむ。ちなみに翔平と義兄である和也さんは悠翔と一緒にブロックでなにやら盛大な作品を作っている。

「瑠衣、リンゴすりおろしてくれる?」

「皮ごとでいいんだよね」

 この日姉が準備してくれたのはしゃぶしゃぶ。夜は少し冷え込むようになってきたので今年初鍋をしようという話になった。

 山科家のしゃぶしゃぶはポン酢とゴマダレ。それとすりおろしリンゴに醤油や酢などの調味料を混ぜて作った特製タレの三種類。姉は今日もそれを準備してくれていた。

「わたしもこれ、お母さんに作り方教えてもらった。冷しゃぶのときに活躍したよ」

 すりおろしながら、なんでもない会話をする。

「昔は瑠衣全然お料理しなかったもんね。お料理どころか洗い物も隙あればわたしに押し付けてきてたもんね」

「ねぇ、今それ言わないでよ」

 昔の話を持ち出されると肩身が狭い。お互い笑い合いながら手を動かす。
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