冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
「なるほどね……少しターゲットを絞りすぎている気はするけれど。なかなかおもしろいね」

 なんとかわたしの熱意は伝わったようだ。

 達成感で体中が満たされる。結果がどうであれここまで頑張れたことを誇りに思い周囲のみんなに感謝した。

「今日のあなたもとても凛としていますね。素晴らしいわ」

 女性の人事課長がそう言って微笑んでくれた。

「女性は色々な役割を社会で果たさなくてはいけない。でもそれを重荷に感じることなく、時に凛々しく、時にかわいく、メイクを楽しみたい……自分もそう思います」

 女性の上司からの共感を得られてものすごくうれしかった。

「はい」

 わたしは満面の笑みで返事をした。

 自分の考えをこうやって表現する機会が持てたことに感謝した。


 駅から早足で翔平のマンションに向かう。悠翔を保育園から連れて帰ってくれて、小児科に連れていったとメッセージが届いていた。熱はあるけれど比較的元気だと書いてありホッとした。

 でも早くふたりに会いたいわたしは、ヒールの靴を煩わしく思いながらコンビニで悠翔の好きなヨーグルトだけ買ってふたりの待つマンションに走った。

「悠翔は?」

「今、寝たところ。安心しろ。呼吸も脈も安定してる。熱もほぼ平熱まで下がった。それより結果どうだった」

「そうそれ! やったの! 合格」

 興奮したわたしは悠翔が寝ているにもかかわらず大声をあげてしまい、慌てて手で口を押さえた。けれどそれよりも大きな声で翔平が叫んだ。

「やったな! すごいな!」

「え、待って。きゃあ」

 翔平はいきなりわたしを抱きかかえると、そのままうれしそうにぐるぐる回った。こんなに彼が喜ぶ姿を見たのはめずらしく驚いてされるがままになる。

「俺の瑠衣はやっぱり最高だな!」

「翔平……」

 自分のことのようにはしゃぐ翔平の姿。しかしわたしは胸が苦しくなり、目に涙が浮かぶ。そして我慢できずに泣き出してしまった。

「おい、どうした?」

 びっくりした翔平がわたしを下ろす。

 わたしは涙を拭うことも忘れて彼に告げた。

「翔平が好き。好きなの」

 どうしてこのタイミングだったのか自分でもわからない。

 だけど胸の中にずっとあった言葉があふれ出して止まらない。いきなりで驚いた顔をしていた翔平が声をあげて笑った。

「やっと認めたな。かわいいやつ」
< 88 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop