悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。





私はただ愛が欲しかった。私はずっと愛に飢えていた。だから私は無償の愛を私に捧げることを私好みの男たちに強要させた。

私はこの国の姫であり、魔術の力は国の中でもトップレベル。権力も純粋な魔術の力も持っている私を誰も止めることなどできなかった。

私の恋人たちはその力によって捕らえられた者たちだ。
私の為だけに作られたこの宮殿の外へ出ることは許されず軟禁され、そこで彼らは私に必ず尽くし、愛を囁かなければならない。

リアムは隣国の王子様であり、外交官だ。以前私の国へ外交官として訪れた際、私はその美しい姿と何よりも一緒にいる時間があまりにも楽しく、彼が欲しいと思った。
すぐに隣国にリアムを私に渡すように言ったが可愛い息子を婚約者としてならまだしも、物のように欲する私になど渡したくなかったようでいい返事は返ってこなかった。
だが、私は欲しいのものはどんな手を使ってでも手に入れる質。私は1人で隣国へ向かい、城の兵士を全員倒し、国王に剣の先を向けてこう言ったのだ。

「殺されたくなければリアムを私に渡しなさい」と。

そうすれば国王は簡単に私にリアムを渡した。
そしてリアムは今、私にここで愛を強要され、軟禁されているのだ。

私のことを恨まない訳がないだろう。

彼は私が何を望んでいるのか一度だけ伝えるとすぐにそれに嫌な顔一つせず従った。


今日までずっと。


「リアム、離して。シャワーを浴びたいわ」

「離したくないけどそれは仕方ないね。一緒に入らない?」

「そんな気分じゃないの」

「わかったよ」


私の願いを聞いてリアムはすぐに私を解放した。
リアムは本当に私の望む言葉、態度をいつもくれる。

今も引き際をよくわかって私を引き止めたりしなかった。


私は甘いマスクの笑みを未だに浮かべているリアムに背を向けるとシャワー室の方へ向かった。








< 4 / 66 >

この作品をシェア

pagetop