悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
だが、恋人たちに恨まれてでも私は愛を欲する。それが偽物の愛でも、私は欲しい。
私は今まで愛されてこなかった。王や王妃の愛は全て優秀な兄たちに注がれた。
愛を注がれた兄たちは期待され、愛の鞭を受けながら努力をして立派な王子に成長した。
愛を注がれなかった私は期待されず、放任され、どんなに兄たちのように努力してもそれを否定されて、立派な愛に飢えた姫に成長した。
好きの反対は無関心とはよく言ったものだ。本当にその通りであり、やがて何をしてもリアクションが返ってこない両親や兄たちに私は絶望した。そして偽物でもいいから両親たちが与えてくれなかった愛を求めるようになったのだ。
「ルーク」
「なぁに?」
「愛を囁いて」
「いいよ、お姫様」
両親たちのことを考えていると心が氷のように冷えてしまったのでまた偽物の愛でその心を温めようと、ルークに願うと当然だがルークは私にいい顔をして返事をする。
「愛しているよ、エマ。僕にはアナタだけ。お願い。側にいて。いやいさせて」
そして嫌な顔一つせず甘い言葉を並べて私の手の甲にキスを落とす。
私はその言葉、その態度一つでまた心が満たされた。
偽りのものだったとしても私はそれでいい。