天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 ソファに座った彼は、私の手を引き隣に座らせた。


「私はこれがあるもの。私のじゃないの」


 ネックレスにしている指輪を取り出して彼に見せてから伝えた。


「じゃあ、誰の?」
「余計なことだって怒られそうなんだけど……」
「気になるな。早く吐けー」


 彼は私の鼻をつまむ。


「わかったって。小栗(おぐり)さん、来週早々に転院でしょ?」
「小栗さん?」


 脳外科病棟に入院中の小栗さんは、七十八歳の女性。膠芽腫(こうがしゅ)という悪性度の高い脳腫瘍で、他院ではどうにもならず陽貴さんの噂を聞きつけて来院した。

 可能な限り手術で腫瘍を取り去ったが、言語中枢にかかわる場所にありすべては摘出できず。

 放射線治療や抗がん剤治療を開始したものの、これ以上の回復が期待できないという診断だ。

 しかも抗がん剤の副作用に苦しみ、緩和ケアを望んで転院が決まった。
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