天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 つまり、これからは積極的な治療は行わず静かに死を待つことになる。


「うん。転院の手続きを旦那さんにお話ししてたら、転院の日が小栗さんの誕生日だと気づいたの。旦那さんがね、なにかプレゼントしたいと言いだされて」


 余命一年という診断が下っている小栗さんにとっては、最後の誕生日となる可能性が高い。
 それを覚悟してのプレゼントなのだ。


「それで、指輪?」
「うん。おふたりは学生結婚なんだって。結婚当初はお金がなくて指輪も買えなくて、そのままだったからって」


 紛失の恐れがあるので貴金属は持ち込めない病院が多い。
 しかし、緩和ケア病棟なら小栗さんの願いを叶えられるはずだ。


「そっか。小栗さん喜ぶだろうな。で、どうして季帆が買いに?」


 彼が賛成してくれてホッとした。


「旦那さん、恥ずかしくて買いに行けないんだって。それに、奥さんをひとりにしたくないって」


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