天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「脳外にいると、緩和ケアに移るという選択は珍しくない。最初の頃は俺が泣きそうで……。でも、『先生のせいじゃない。先生は全力を尽くしたんだから胸を張っていればいい。くよくよしてないで頑張りなさい』と叱ってくれた余命半年の患者さんがいた」


 どんなときでも冷静に見える彼でも、葛藤があるのは知っている。

 しかし、そうした経験を積んできたから笑顔で患者さんを送り出せるのかもしれない。


「俺たち医療従事者は、患者さんに育てられるんだと思う」
「うん」


 やはり彼は、素敵なドクターだ。技術だけでなく、心も一流の。


「季帆、今日は――」
「大丈夫」


 きっと草野さんとの会話のことだと思った私は、彼の言葉を遮った。


「私、あのとき全力を尽くしたの。足りなかったことはあったかもしれない。だから許してほしいなんて言い訳するつもりはない。でも、精いっぱいやったの」


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