天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「はい。喜んでくれるでしょうか」

「もちろんですよ。女にとって、大切な人からもらった指輪って特別なんです」


 私は首から下がる結婚指輪にブラウスの上からそっと触れた。



 翌日。小栗さんの退院は受け入れ先の病院の都合で午後になった。

 オペ前の陽貴さんも病棟に駆けつけてきて、車いすの小栗さんのお見送りをする。


「倉田先生、本当にありがとうございました。先生に会えて、私の命を惜しんでくれる人がいるんだとうれしかった」


 小栗さんが目に涙をためて話す姿がいたたまれない。


「当然です。小栗さん、まだ生きてください」


 互いに余命を知った上での会話は残酷だ。
 けれども、小栗さんも陽貴さんも笑顔だった。


「そうね。この人が寂しがるから頑張らなくちゃ」


 隣に立つ旦那さんを見上げながら手を握る小栗さんの薬指にあの指輪が収まっているのに気づいて胸が熱くなる。

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