天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 もしかしたらこの指輪が、彼女の寿命を延ばすのではないだろうか。

 最後に旦那さんは私にも小さく会釈をしてから、ナースに付き添われてエレベーターに乗り込んでいく。

 天に召される準備をするために転院する彼女に、これでもう会うことはない。

 そう思うと目頭が熱くなったものの、ぐっとこらえて笑顔を作る。
 小栗さんが泣いてはいないからだ。


「行ってきます」


 彼女の言葉に驚いたが、陽貴さんは口角を上げてから口を開いた。


「行ってらっしゃい、小栗さん」


 そこでエレベーターの扉は閉まった。
 その瞬間、涙が一粒頬に伝ってしまい、あわてて手で拭う。


「よく頑張った、香月」


 するとそれに気づいた陽貴さんは、私の頭をトントンと叩いてからナースステーションに戻っていった。



 その後はいつも通りの業務をこなした。


「香月さん、ごめん。お使い頼まれてくれる?」


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