天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 ごく当然の指摘をしたまでなのに。おそらく厳しい注意を腹に据えかねているのだろう。


「もちろん知ってます。とても優秀なドクターです」


 〝それはあなたの思い違いです〟という意味を込めて返した。


「優秀ねぇ。たしかにオペは速かったけど」


 大学病院時代はそれほど親しかったわけではないので、草野さんがどんな人なのかはよく知らないが、私とは考え方が交わらない人のような気がする。


「まあいいや。せっかく再会できたんだから飲みに行かない? 俺、あの医療ミスのあと、香月がどうしてるか心配だったんだよね」


 口調が軽すぎて心配していたとは思えない。
 飲みに誘う口実なのがバレバレだ。

 彼はそういう誘い方をすれば私の心が傾くと思ったのだろうか。

 私は思い出したくないので、あのときの話なんてしたくない。
 ましてや真相を詳しく知らない彼は、適当に慰めて終わりだろう。

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