天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 彼はこうして仕事に時間を割くのを申し訳なく思っているようだけど、私も元看護師だし、なにより陽貴さんの仕事をしている姿が好きなのでまったく不満はない。

 それに、時間が取れればたっぷり甘やかしてくれるし、きちんと愛を言葉で示してくれるから不安になることもない。

 帰宅してからはベッドでたっぷり愛されて、心地よさを感じたまま眠りについた。



 お盆を過ぎた火曜日。

 お盆休みもみっちり働いていた天野さんが、私の横で愚痴をこっそり漏らし始めた。
 先輩のナースの前で口にすると叱られるからだろう。


「鈴木(すずき)さん、全然意思の疎通ができなくて疲れちゃいました」


 鈴木さんは脳梗塞で入院している八十一歳男性の患者さんだ。


「ウェルニッケ失語だよね」
「そう」


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