天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 左側頭葉後方から頭頂葉下部に病巣を持つ鈴木さんは、滑らかにぺらぺらと話すが、たとえばバナナをリンゴと言ってしまうような語性錯語が顕著に表れている。

 しかも自覚がないので周囲が理解してくれないとイライラしているのだ。

 また、メガネをメガレと誤るような音韻性錯語もあるが、こちらは自覚して言い直しても正しく発語できない。


「香月さん、昨日すごくにこやかに話してましたよね? 私、あんな余裕全然なくて」


 鈴木さんは自分の思いがうまく伝わらないことに焦りを感じていて、次々といろんな人に話しかけては落胆している。

 リハビリから戻ってきた彼とすれ違ったときに話しかけられて、付き添っていた言語療法士とバトンタッチしてしばらくおしゃべりに付き合ったのだ。

 といっても、その会話の大半は私も理解していない。


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