天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 蓋を開けそうなところで『それ違います!』と止めたのだ。

 ここにこうして顔を出すのも土日を除いて六日目。
 しかし、冷蔵庫の在庫が増えるばかりだ。


「プリンなんて持ってきても無駄だ」


 ようやく会話らしい会話をしてくれたので、心の中でガッツポーズをする。

 主治医の陽貴さんとも必要最小限の言葉しか交わさないと聞いているからだ。


「無駄でしょうか? このプリンにはたっぷり愛情がこもっているのをご存じですよね」


 もちろん、お母さんの愛情だ。
 しかもここに顔は出さずとも毎日足を運んでいるとわかっているはず。


「それにこれ、片山さんしか食べられないんですよ。だって記名してあるんですから。食べます?」
「いらない」
「そうですか。それではまた入れておきますね」


 私は六つ目のプリンを入れて病室を出た。
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