天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「俺、季帆にプロポーズする少し前に、三十代の働き盛りの男性を担当していたんだ。彼も脳挫傷で障碍を負って職を失った。でも奥さんは彼を支えていくと決めて、今、四歳になる息子さんをふたりで育てている」

「そうだったの」

「うん。彼の場合、記憶障害が一番強く現れて、約束の時間を忘れてしまうし、新しく会った人の顔は覚えられない。だから引きこもってしまったんだけど、奥さんが『忘れたらまた初めましてでいいじゃない』と笑うって」


 なんて強い奥さんなのだろう。


「他の会話は忘れても、この言葉だけは忘れたくない。だから紙に書き残してあると打ち明けてくれた」

「そっか。新しい幸せの形を見つけたんだね」

「そうだな。今は以前の職場の伝手で在宅でできる仕事をしている。うまくいく例ばかりではないとわかってるけど、奥さんがあきらめなかったから笑っていられるんだろうな」


 私は深くうなずいた。


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