天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 彼には半側空間無視の症状があり、左側にあるものは見えていても認識できないからだ。

 そのため左側にあるものにぶつかったり、食事の際もトレーに乗せられた左側のおかずは手をつけなかったりする。


「なあ、やっぱ俺と付き合わない?」
「えっ……」


 その話を蒸し返されるとは想定外で、とっさに切り返せない。


「ひとりじゃつらいんだよ。俺を理解してくれる人にそばにいてほしい。そうしたらリハビリだって乗り越えられる」


 彼の悲痛な訴えに胸が痛む。

 しかし、社会復帰の手伝いはできても彼女としては寄り添えない。


「ごめんなさい」
「倉田先生」


 彼が唐突に陽貴さんの名前を出すため目を瞠る。


「付き合ってるの?」
「どうして……」


 彼の前でそんなそぶりを見せたことはないはずだ。


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